2012-08-01から1ヶ月間の記事一覧

書評:内山節『日本人はなぜキツネにだまされなくなったのか』講談社現代新書

「山村に滞在していると、かつてはキツネにだまされたという話をよく聞いた。それはあまりにもたくさんあって、ありふれた話といってもよいほどであった。キツネだけではない。タヌキにも、ムジナにも、イタチにさえ人間はだまされていた。そういう話がたえ…

暴力の行方

それから、西垣通、内山節に共通しているのは、現代の暴力のありようの考察である。戦争 / テロリズム / 犯罪を巡る彼らの意見は必ずしも一致していないが、かつてとは少し違う暴力の発現形態があるのではないか、ということでは共通している。小さいものか…

買うことができないもの

西垣通の指摘には傾聴すべき点が多いが、一つ一つ検討していきたいが、まず、以下である。「コンビニの長所は、安心感だけではない。強力なPOS(販売時点情報管理)システムにもとづく高度な物流システムである。いつ、どこで、いかなる商品が売れているかを…

キツネに化かされず、ITに惑わされる。

私は毎日、十時間以上書き続けているが、Facebookに書いているだけである。はてなダイアリーなどで一般に公開する必要を感じないが、それは、ただの思念や会話が記録されず消え去るのみであるのと同じである。それはそうなのだが、今日は先程素晴らしい本を…

売る・売らない、そして売れない《商品》

トロンボーン奏者ではなくビジネスマンのほうの松本治さんの「リクエスト・メイド・システム」を検討するが、その前に予備的に検討しておけば、現代の我々は、流通論を考えるといっても、インターネットを抜きにすることはできない。音楽のダウンロード販売…

売る・売らないは、私が決める。

「良寛がなかなか書いてくれないという話は、当時の越後では有名だった。もともと良寛は亀田朧斎のように代価を受け取って書くことを業とする書家ではない。托鉢の余芸として詩歌を作り墨蹟に認(したた)めたものを、心ある人に布施することから発した徳行…

消費と啓蒙

暫く考えていたが、憂鬱にならざるを得なかった。私は、資本主義は素晴らしいとか、マーケティング万歳という立場ではなく、むしろ逆である。だが、資本制市場、商品社会からの出口、それの外部など見当たらないのである。それが抑鬱の理由である。人間は遥…