2012-06-01から1ヶ月間の記事一覧

大江健三郎『懐かしい年への手紙』メモ

「ギー兄さんよ、あなたは怒りを発した。それからは、挑発に倍して自分から攻撃的になって行った。──おまえたちは森の力にそって生きる恩寵を拒んだ以上、森の異教徒として、その力の脅威を惧れながら暮してゆくほかあるまい、とその場にいた誰もよくは理解…

sur l'association

これから図書館でポール・ヴィリリオの『民衆防衛とエコロジー闘争』と島田雅彦の『英雄はそこにいる』を借りてくるが、その前にここ数日気になっていることをメモしておく。それはプルードンの"association"(連合、アソシアシオン、アソシエーション)概念…

com-post投稿

私も史実といいますか、技術的条件を重視したほうがいいように思います。何か深刻な精神的、「実存的」な変容だと看做したものが、実は、録音技術の未発達の結果でしかなかった、という平凡な現実は、如何にもありそうなことですよね。林さんの御投稿があり…

(社会)科学方法論 6

マルクス主義の歴史観の問題は、そこにおいて歴史、世界史に目的論が持ち込まれることである。マルクス没後もそうであり、レーニンが『帝国主義論』を著したとき、彼にとって帝国主義とは、資本主義の最高の段階であるとともに最後の段階、最終段階であった…

(社会)科学方法論 5

『資本論』かどこかでマルクスは「人間の解剖は猿の解剖に役立つ」といっているそうだが、これは、ダーウィニズムなどの生物学的な考え方と微妙だが決定的に異なっている。どこが違っているのかというと、思い出していただきたいが、生物進化の学説において…

(社会)科学方法論 4

ここで漸くマルクスの『資本論』に戻ることができるが、そこでは「商品」から出発される。マルクス自身はそれを、生物学者が顕微鏡で観察する細胞組織に喩えているが、ニュートン物理学を科学性の規範とし、「観念」、「印象」などの抽象的に還元された要素…

(社会)科学方法論 3

マルクスに戻る前にフロイトの隘路について触れたいが、まずいえるのは、後にラカンは「数学素(マテーム)」によって精神分析学を根拠づけようとしたのだとしても、フロイト自身にはそのような数学化の志向はないということである。彼自身は、生理学、生物…

(社会)科学方法論 2

『心理学』のウィリアム・ジェイムズは、連合心理学の要素還元主義を批判し、「意識の流れ」こそリアルなのだと主張し、同時代人、例えば『ユリシーズ』のジェイムズ・ジョイスや『善の研究』の西田幾多郎などに多大な影響を与えたし、哲学・思想のレヴェル…

(社会)科学方法論

漠然と「人文(学)」と呼ばれる領域があり、人間性への批評・洞察が語られたり、歴史の事実が記録されたりしている。ところで、人間、心理、社会についての一定の知の構築を目指す人間諸科学、社会科学、社会学、心理学などはそれとは別である。人間本性=…

(社会)認識の方法

昨晩書いた考察の続きを少し展開してみたいが、マルクスの『資本論』の議論は幾つかの方法で編成されていると思うが、彼が序文で明確に述べているのは、「抽象力」というものである。生物学者が顕微鏡で細胞を研究するように、自分は「抽象力」で商品、価値…

計算可能性

今日の放送で述べた考え方を一言で要約すれば、「個人についても社会についても、快楽と苦痛を完全に合理的に計算し予期することはできない、そこには限界がある」ということで、当たり前だと思われるかもしれないが、昔も今もそう思う人々が非常に多いので…

読書, to read, to read and to read!

川喜田喜美子・高山龍三編著『川喜田二郎の仕事と自画像:野外科学・KJ法・移動大学』(ミネルヴァ書房)。KJ法は常に上手くいくものではなく、フィールドワークの纏めなど一定の条件において成功し得るものである。『丸山眞男集:第1巻(1936-1940年)』(…

山中貞雄『人情紙風船』

首相官邸前に行こうかとちょっと誘惑に駆られたが、体力も金銭もないという残念な現実である。生徒が月謝を払うのは日曜日だし、株式を売却してもお金が入るのは4日後である。ふと山中貞雄『人情紙風船』という戦前の優れた映画を思い出したが、貧困を描いた…

補足

世界史を吟味すれば、古代世界において、ローマ帝国はフン族などの蛮族の侵入に悩まされ、中国の帝国は夷狄と緊張関係にあった。ドゥルーズ=ガタリのいう純粋な「戦争機械」とか「遊牧民」などを具体的に歴史のなかに探せば、そういうものしかないが、近代…

補足

読書人の多くはそう思わないが、「戦争機械」によって「国家装置」を攻撃し解体するというドゥルーズ=ガタリの『千のプラトー』のほうが9条よりも遥かに現実的だが、問題は近代世界には国家から自立した「軍」などないということで(サパティスタは例外かも…

倫理・道徳ではない平和主義

私の考えでは、ソヴィエト連邦、革命ロシアが理想主義的な社会実験であったというだけではなく、戦後の日本、9条を含む日本国憲法を持つ「日本国」もそうである。というのは、日本を占領したアメリカ人のごく一部の理想主義者達が、自国の憲法にすら書き込め…

補足

さて、補足だが、トロツキーの思想と実践において問題なのは、ロシア革命や永久革命(永続革命)論というよりも、赤軍の創設である。戦後の日本の歴史的・社会的現実でも、日本国憲法が制定される際、9条の戦争放棄に反対で、人民軍を創るべきだと主張した左…

セクシュアリティと資本主義

硝子たんさんはトランスジェンダーであるばかりでなく発達障害でもあるそうだが、そうすると、彼女が望むように新自由主義政策、ありとあらゆる規制の緩和・撤廃を実現したら、彼女自身が淘汰されてしまう可能性が高い。そして淘汰されるのは彼女だけではな…

地域通貨について

(4)に関連して、十年以上前柄谷さんがイギリスの哲学者のことを書いていたのを思い出した。その哲学者は自分の哲学を地域通貨で売り、労働者に部屋の掃除をして貰ったそうだが、彼は自分の抽象的な思考・言説が具体的なモノ・サーヴィスと交換されたこと…

思想史メモ その3

(4)ただ問題は、その後の歴史の展開で、元々のインドにおいては仏教が消滅したことである。それは中国、日本などで受け継がれたが、釈迦の考え方とは違っていた可能性が大きい。中国人は輪廻転生というアイディアに、何度も何度も繰り返し生きることができる…

思想史メモ その2

(3)ヒンズー教を批判する仏教(釈迦=仏陀)、ユダヤ教を批判するキリスト教(イエス・キリスト)、古代ギリシャ(アテナイ)の伝統的な社会を揺るがすソフィストとソクラテス。釈迦(仏陀)が持ち込むラディカリズムは、伝統的なヒンズー教が想定するカース…

思想史メモ その1

(1)思想(thought or idea)一般と哲学(philosophy)の違いの劃定。ショーペンハウアー、ヤスパースなどが漠然と考えたのとは異なり、ヘーゲル、ハイデガー、ドゥルーズなどがいうように、哲学の思考はそれ以外の思考一般とは異なり、古代ギリシャの都市国家か…

『吉本隆明全集撰3(政治思想)』(大和書房)を読む

「第二の疑問は、中野文を信用するならば、佐野、鍋山が、「日本思想史」や「仏教史」について何ほどの知識も見解もなくて、共産主義運動の指導者だったのか、といういくらかみじめなものとしてやってくる。『大乗起信論』(にかぎらず)ひとつ手にしたこと…

ルソー『社会契約論』を読む

ホッブスの場合も契約によって国家が生まれると説くが、彼の発想は現実に存在する不平等をどうにかする、解消する手掛かりを与えてくれない。ルソーも実は多面的な思想家だが、或る意味簡略化して解釈すると、フランス革命の原動力になる、と思われたのであ…

miyaさんの御意見に触発されての、私の感想

com-postでのmiyaさんの御意見を拝読して、反論というわけではなく、私自身の考え方を説明しておこうと思う。それは、歴史、死者、記憶、記録などについてどう考えているのか、ということである。音楽、ジャズに限らずありとあらゆる事柄についてそうだが、…

言葉と現実

メモ風に書いてみる。言葉と現実。理論と(社会的な)現実、実在。ドゥルーズ=ガタリの『アンチ・オイディプス』における「スキゾ」、同性愛、「横断性愛(「トランスセクシュアル」が、こう訳されている)。吉本隆明の語る「同性愛」、「ひきこもり」、「…

悪夢のかたち

眠ろうとしたが、実に恐ろしい悪夢の数々、金縛り、幻覚などに襲われて1時間で目醒めた。正直、「目が醒めて本当に良かった」と思った。まず私が見たのは、両親が酔っ払って喧嘩しており、父親が何が私について悪態をついている、という夢で、最初私はこれは…

inseparability

廣松渉は彼自身の考え方、「実体論から関係論へ」とか「事的世界観」を、仏教思想に親和的・類縁的なものと考えた。確かにそうかもしれないが、もしそうだとすると、マルクス=エンゲルスの唯「物」論(materialism)との関係はどうなるのだろうか。私の考えで…

奇妙な夢〜最初の言葉

具合が悪いので2時間休んだが、奇妙な夢を見た。大学生君のピアノのレッスンだが、レッスンは終わり、彼はピアノを弾き終えたのだと勘違いして、私は、有線放送でソロ演奏のジャズ・ピアノのチャンネルを聴いた。それから、気紛れに、クラシックのCD、ウィル…

「息しているのも不思議だぜ」

2012年現在よりも酷い状況があり得るのかとも思うが、2003年には病気(精神病)が重篤であった。個人的にはNAMの崩壊、社会的にはイラク戦争などで、公私共にピリピリした神経質な雰囲気だったということを覚えている。当時、岡崎乾二郎とその周りの人々が実…