2012-05-01から1ヶ月間の記事一覧

ソングマスター

「どうかしたの?」 彼女は尋ねた。 「彼は牢獄にはいない」 「じゃあ、どこに?」 「病院だ」 アンセットは答えた。兵士たちがあるドアの前で立ち止まった。 「あの男はすっかり薬漬けだ。いまのところ、あまり見よい状態でもないが、ありのままの彼を見せ…

狼のバラード

ようやく視力を回復したおれは恐ろしいものを見た。 眼前でよろめいているのは、悪魔的な美貌の光夫ではなかったのだ。無残に老い朽ちた、おそろしく高齢の老人の醜貌だった! 「たすけてくれ! 兄貴…」 老人はしゃがれた声でささやいた。 「身体が変なんだ……

『獣人伝説』(角川文庫)

「汝、裁く者よ、裁かれてあれ」 「死を……」 「裁かれてあれ」 「早く死を」 スピーカーからの声に、ふと憐れみの色が混ったようであった。 「神崎順一郎」 「はい」 「お前は呪われたのだ」 「お助けください。わたしは神の非を悟りました」 「他を裁くこと…

陽がくまなくあたっている伊勢崎町交差点は死躰で一杯だった。

陽がくまなくあたっている伊勢崎町交差点は死躰で一杯だった。死躰たちは、押し合いへし合いタバコをくわえ口笛を吹き腕を組みあくびをし風船を喪くして泣きわめき鼻をかみ屁をこきせびり走り転び地だんだをふみ痰をとばし尻をなで万引きし喚き立ち小便しマ…

Close to you

丁字、菊花等は…

丁字、菊花等は、汚処の臭を消すため、また一つは刺激剤とも催淫剤ともなり、麝香、竜脳、ことに然り。古ローマには蕁麻の細子を用いしことあり。苛痒くするなり。例の紫しょう花(淡水生の海面なり。白井博士談に、東京下谷に売りおる店ありとのこと。小生…

music

of tadashi settsu. http://www.ustream.tv/recorded/22935205

轢死に名を残す

《つまり、この子を「気がおかしい」と思った人はみんな死ななくてすむんです。ところがこの子を、何かできそうだ、と思った人は死ななくちゃならない。》《難しいクライエントの周囲ではね、そりゃ次から次へと感心するほど巻き込まれた人が死んだり、交通…

メモ

John Coltrane "Stardust". 余り知られていないが、良い演奏。50年代コルトレーンが大好きだ。他には、Tadd Dameronとの"Mating Call"など。経済思想の素人である自分の限界を反省する。例えばマルクスはアリストテレスに言及している。ふたつのものが交換さ…

'Round About Midnight

まず他の人間の中に、自分を照し出す……

このことは、商品と同じようにいくらか人間にもあてはまる。人間は、鏡をもって生まれてくるものでも、フィヒテ流の哲学者として、我は我であるといって生まれてくるものでないのであるから、まず他の人間の中に、自分を照し出すのである。ペーテルという人…

ニーチェ、マルクス。

どうでもいい細かい細部がどうしても気になるのだが、ニーチェにおける真理と嘘について。『この人を見よ』の終わり頃に出てくる断言だけ読めば、簡単にみえる。彼は、これまでいわれてきた真理は嘘だが、彼自身がいうことは真理なのだといっている。それは…

国家について、補足。

さて、先程NAMには国家論がなかったといったが、少し訂正せねばならない。実際には、NAMの時期における政治理論的テキスト(『可能なるコミュニズム』、『NAM原理』、『トランスクリティーク』)にも国家についての一定の考え方があった。要点をいえばふたつ…

津軽三味線とジャズピアノの演奏

こちら→http://www.ustream.tv/recorded/22889930

Walter Davis, Jr. "Illumination"

Illuminationアーティスト: Walter Davis出版社/メーカー: Denon Records発売日: 1994/07/26メディア: CD クリック: 1回この商品を含むブログ (1件) を見る

もしも人が死ぬほどまでに笑わなければならないのだとしたら…

内在的な道徳は、もしもそうできるのならば、私が理由なくして死ぬことを要求するであろう。だが何の名の下にこれを要求するのか。無の名の下にである。そして私はこの無を笑いとばさなければならないのだ。実際私はこの無を笑いとばす。するともはや要求は…

生をあざ笑うほうが、それを悲しむよりも人間にふさわしい。

それゆえわれわれは方向を換えて、人々が一般にもっている悪徳は、すべて憎むべきものではなく、むしろ笑うべきものと見るがよい。ヘラクレイトスよりもむしろデモクリトスを真似るがよいのだ──ヘラクレイトスは公衆のなかに進んで行くたびに泣いたが、デモ…

国家について

ベネディクト・アンダーソンの《想像の共同体》論が空疎だから否定してみるとかいう左翼が膨大にいるが、マルクスを読んでもそこに見出されるのは国家とは《幻想的な共同体》だという規定だけである。だから、彼らがアンダーソンに不満を持つのだとしても、…

池田雄一『カントの哲学 シニシズムを超えて』(河出書房新社、シリーズ:道徳の系譜)を読む:「行為への移行」

《この不可解な行動の結果、シーニュもまた致命傷をおってしまう。テュルリュールは、なぜ心底軽蔑していた自分のために盾になったのか、死ぬ直前のシーニュに尋ねるが、彼女は顔をただ痙攣させ歪めるのみであった。》(池田雄一『カントの哲学 シニシズムを…

生そのものというよりは、むしろ生への温和な思い出

私はニーチェの『この人を見よ』が子供の頃から大好きなのだが、この最後の本は、ニーチェ思想、ニーチェ主義とは関係ないと感じている。フーコーの意見では、《わたしはどうしてこれほど賢明なのか》というニーチェの傲慢のどこに狂気が忍び込んだのか穿鑿…

詭弁を讃えて

言語による破壊活動の可能性と条件を、数時間かけて徹底的に検討してみた。それはそうと、マルクス『資本論(一)』(エンゲルス編、向坂逸郎訳、岩波文庫)読了。何度読んだかしれないが、昔々から、人間労働が重要だなどと思ったことがただの一度もない。P…

攝津正の犯罪 volume 1

さて、2012年5月21日(月)に37歳の誕生日を迎えたが、5月21日が本当の誕生日ではないという説もある。私が生まれた頃、祖父が亡くなり、そのせいで誕生日がずらされたというのだ。──その説の真偽を確かめることはできないが、それはともかく、《ハッピー・…

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それでは、時間とは…

それでは、時間とはなんであるか。だれもわたしに問わなければ、わたしは知っている。しかし、だれか問うものに説明しようとすると、わたしは知らないのである。 聖アウグスティヌス『告白(下)』(服部英次郎訳、岩波文庫)、p.114。最も有名なくだりであ…

牽強付会

『ウェザー・リポートの真実』は未読ですが、高橋悠治→坂本龍一とか、キース・ジャレット、ジョー・ザヴィヌルというのは牽強付会ですよね。高橋悠治はジャズを強く批判し続けているし、坂本龍一も若い頃渡辺香津美のアルバムに参加したことはあっても、ジャ…

スコラ!

アウグスティヌスには詳しくないです。岩波文庫に入っている『告白』を覗いたくらいですが、彼にはそれ以外にも『三位一体論』など重要なテキストがありますよね。トマス・アクィナスの対抗馬といえば、初期の教父達、ちょっと異端的なプラトン主義者(新プ…

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